競争やめたら学力世界一~フィンランド教育の成功~
福田誠治著 朝日新聞社出版
2004年PISAの国際学力調査結果は、世界中で話題になった。日本でも、読解力低下を問題視され、国語教育の実践研究が、盛んに行われる。
そして、先日、2006年の調査結果が発表され、今度は、理数教育に光が当てられる。
OECDグリア事務総長、生徒の学習到達度調査(PISA)2006年調査結果を発表
原文
■PISA 2006 results
http://www.oecd.org/document/2/0,3343,en_32252351_32236191_39718850_1_1_1_1,00.html
1年前、既に、福田先生の書籍は、西村教授のフィンランド行き発表と同時に、ゼミで紹介された。フィンランド教育を知る上で、有効な資料になる。
PISA研究は、ゼミで取り上げられてきたが、フィンランド教育の背景にある二つの学習理論の存在に注目することが重要。
エンゲストローム「拡張による学習」と、ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」を、しっかり認識する必要がある。
エンゲストロームの「拡張による学習」は、
フィンランド教育実践の土台にあるこの学習理論で、
知識は、主体が探求するものであるとする、つまりは、従来、教師が与えていた授業による知識獲得という考え方ではなく、主体である学習者(子どもたち)自らが、知識を求めていくものであるという。それらを社会という枠にはめ込んだとき、さらに主体は、その中で、知識そのものを変革した新しい知識を獲得していくこと、この過程と、さらに、その主体が所属する集団の中、たとえば、職場や学校という所属集団の変革をおも引き起こすとされ、フィンランドでは、決まった知識を覚えればいいという教育観ではない。
ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」は、
「大人による指導、援助の下で、可能な問題解決の水準」と「子どもたちのもつ自主的活動における問題解決の水準」に食い違いがあるということから出発する。
この二つのレベルをとらえ、一方は、学習者(子どもたち)自らが、ひとりで対処できるレベルと、他者の介在によって、解決できるレベルの差を、個々人に合わせて、的確に把握し、その個人に適切な可能性を示唆し、発達を支援することこそ、教師の専門性であるとしている。
さらに、ここでいう「大人」とは、子どもたちにとっては、他者であってよく、友だちでも、先生以外の大人でもよいとする。そこには、「協同の知」が存在している。
これらのことは、特別支援教育においても、重要な学習理論であり、注目されるフィンランドの特別支援教育においては、この二つの教育観が根底にあることを、おさえる必要がある。