学習障害の診断と指導
伊藤隆二著 岩崎学術出版社
学習障害をしっかり学びたいと考えている私にとって、バイブルになる伊藤隆二先生の書籍。
LDの実態は、調査方法の確立がされていないだけ、なかなか進んでいない。学びたいのに「学ぶ」機能のハンディキャップのために充分に学べない子どもたち。
私がこの子たちに注目したのは、日頃の授業からの知見。
コンピュータ学習の中で、彼らを見つけ出すことは、以外と簡単だった。その基準にあるものを整理しておきたいと思う。彼らの視覚認知を、コンピュータは、検知できるだろうと考えていたが、この著書からは、もっと違うアプローチがあることを知る。ただ、この研究領域は、まだ、未知なるところが、多いことと、技術的に課題がたくさんある。
子どもたちのコンピュータ操作を、動画キャプチャーして、モニタリングする研究は、一人一人の子どもたちが表出する行動に、どんな意味があるのか、本書の研究は、たくさんの糸口を教えてくれる。
専門書なだけに、もう少し熟考したいと思う。
ただ、ここをしっかり解明していかないと、LD、ADHD、高機能自閉症、アスペルガー症候群等の発達障害に向き合えない。
伊藤先生曰く、
「LDは、一人一人の特異性(dysfunction)を正しく理解し、適切なIEPをつくり、方法を編み出し、根気強く指導していけば、「学ぶ」機能は修正されるのであるから、関係者は、そうした努力を積み重ねていく必要がある。」
脳と知能の関係性を解明するための先生の研究は、シュトラウス研究をたたき台にしている。
本書では、学習障害の概念を以下のようにまとめている。
1.学習障害の概念
・「学習」についての意味づけの明確化
知的教科の学習、ないしは高次神経活動に関連する学習に限定すること。
・学習障害と脳機能障害との関連性の明確化
「学習障害」は環境要因によるのではなく、個体の脳(中枢神経)の機能障害に基づく現象であること。
子どもの主体性を尊重するという立場に立つ以上、子どもを対象化し、その障害を機械論的に捉える弊は極力避けなければならない。
子どもに関わる人間関係を中心においた環境要因からの総合的理解は絶対不可欠である。
・「学習障害」は、脳の機能障害に起因する発達障害(知的遅延、言語障害、計算障害、自閉症など)とは截然(せつぜん)、区別することはできないこと。
従来の「学習障害」の定義では、子どもの知的水準が正常範囲(あるいはそれ以上)にあることが条件に入っていたが、何らかの脳機能障害に起因する学習困難は学習障害とみなすべきである。
・「学習障害」の改善(治療・指導)のためにはそのメカニズム(神経機構)を解決することが先決である。
脳機能障害が学習にどのように影響するかを狭義の「学習」に限定せず、その前提となっている知覚障害(注意障害にも関連する)や行動-運動障害にまで範囲をひろげて解明する必要がある。
学習障害は、外界からの事柄(刺激-情報)を正しく受け止めるための中枢神経系(central nervous sysytem)の機能のうち、統合過程(integrating process)になんらかの障害があり、学習を困難にしている。
つまり、「学習がスムーズに進まない」のは怠学、情緒不安定、自信喪失、興味・関心の拡散、視覚・聴覚などの感覚障害に原因があるのではなく、脳神経の「配線の誤り」「配線の不備」が問題である。
今後、まとめていくこと
2.学習障害の診断
3.学習障害の治療教育
4.学習と思考の教育
まだまだ、はじめの一歩にいる。