私は「挑戦」とは、一人だけでがんばって一人だけで成果を得ることではなく、常に有形・無形の他者の手助けと共にあるものだと思います。
挑戦とは、単に無謀な危険を冒すことではなく、地道な努力と準備があって、成功するものです。
挑戦とは、相手を打ち負かして競争に勝つことを意味するのではなく、その本質は、自分自身に挑戦することです。
挑戦とは、他者の立場を想像する力と、他者と協力しながら新しいものを生み出していく営みです。
挑戦とは、ときに孤独なものですが、一人だけで生きている人間は世界中どこにも存在しません。周囲の人とのつながり、他者とのコミュニケーションを常に重視すべきです。
そして、挑戦とは、常識的な意味での社会的な名誉やステータスを得ることだけがその目標なのではなく、自らがしっかりと生きていくこと、そして自分と他者が共に生きていくことを支えていく営み自体の中に、本当に困難な部分があり、その営みこそが最も重要な挑戦なのだと思います。
平成19年度入学式(学部)祝辞から/平成19年(2007年)4月12日
先端科学技術研究センター准教授 福島 智
引用元URI:http://www.u-tokyo.ac.jp/gen01/b_message19_03_j.html←全文を是非読んで下さい.
インクルージョン時代のICT活用を考えたとき,私たちが向き合うものがどこにあるのか,考えさせられる福島先生の「ことば」.
例えば,今後の不登校児・生徒たちのためのICT活用(e-learning)は,IDパスワードを譲渡して自宅学習を佳しとするものではない.e-learningにある本来の教育は,そこに学習者と教授者のプレゼンスが存在しない限り,高次の教育は有り得ない.このことは,早稲田大学のe-learningが実証済みである.学校に来られない子どもたちが,学びを通じて,ネットワークの向こうにいる先生に会いたいと思わせる教員自身の存在感(プレゼンス),存在価値こそが,e-learningの本来の意義なのである.そこにICTの技術がどう介在するか,そのためにはどういうシステムが必要かを考えていくことこそが,教育の中で,ICTを活用していく意味がある.
そこでは,決して,ICTの技術が先行するのではなく,教育の理念の中で,人と人との関わりが,子どもたちをどう育て,人と人との関わりが,私たち人間にとって,どういう意味があるのか,教育は人であるという意味の深さが見えてくるのだろう.そのことの重要性がわかった上で,ICTの技術の必要性が見いだされるのだろう.
なぜ,ICTなのか?
教育の中で,ICT活用の本来の意味が,ようやく見えてくる時代になる.
references:
西村昭治 (早稲田大学)e-Learningにおける質保証―早稲田大学人間科学部eスクールの取組―
Journal of Multimedia Aided Education Research 2007, Vol. 3, No. 2, 37-43