教師のためのカウンセリング実践講座
菅野純 著 金子書房 (2007)
1年前刊行された本書は,研究室のゼミ内で,書籍に菅野先生のサインをいただき,その後,現場の先生方に早速,閲覧していただくよう回した.その書籍が,1年越しで,私の手元に戻ってきた.本書から,今後取り組む特別支援教育のためのICT活用を考える.
本書のはじめにの中の,菅野先生のことば
・クラス担任の先生方に
心に愛情飢餓感やさまざまな問題を抱えた子,発達に障害のある子,不登校に陥っている子,いじめる子,いじめられる子・・・・など,いま先生方は,教科教育以前の問題に多大なエネルギーを注がなければなりません。そうした問題に取り組んでおられる先生方に,学校カウンセリングの立場から具体的な対応方法を例示しました。また自分の教師としての歩みを立ち止まり,振り返りさらに成長をとげたいと願っている先生方にも読んでいただきたいと思っています。
・管理職の先生方に
子どもの問題をクラス担任がひとりで抱え込む時代から,校内の教師たちが力を合わせて,チームを組んでかかわる時代になりました。(中略)これまで積まれた豊かな教育経験を,管理職としてどのように活かしていくかは,管理職ならではのテーマだと思います。校内の先生方を見守り,エネルギーを与えるために,校内で生じるさまざまな問題を明確化する視点や具体的な指導と支援を援助する方法等が本書には書かれています。
本書の一文一文に,菅野先生の温和な優しさが現れていて,私自身が,カウンセリングを受けているような気持ちになる.
是非,現場の多くの先生方に読んでいただきたいと思う一冊.
本書から,不登校児への課題を整理する.
不登校児の原因15のポイント
- 「学校は理由なく休むものではない」という規範が身についているか
- 親自身が学校生活について否定的なイメージを抱いていないか
- 無理のない友だち関係を維持しているか
- 学校生活に具体的な楽しみを3つ以上持っているか
- 困った時には教師や親に救いを求めることができるか
- これまで安定した気持ちで生活してきたか
- 親に十分依存でき,信頼関係があったか
- その子なりの歩みを大事にされてきたか
- これまで神経をすり減らしてこなかったか
- 親から心的エネルギーをたくさんもらってきたか
- 社会の中で生きることを見据えたしつけを受けてきたか
- 責任をもって行動することや役割達成の大切さと喜びを経験してきたか
- 親自身が社会人として責任と義務をはたし,他者との間に豊かな人間関係を築いているか
- 子ども本人の感受性と自我がバランスよく育っているか
- LDやADHD,高機能自閉症,アスペルガー症候群といった発達上の問題を有していないか
不登校へのはたらきかけのエッセンスとして,不登校指導は,予防的指導,援助的指導,予後的指導の3つに分類される.
今後取り組む不登校児・生徒のためのICT活用は,援助的指導の中で,子どもたちが抱える一人一人の課題に対応できるものでなければならない.そこでは,学習支援のためのICT活用,コミュニケーション能力育成のためのICT活用,自己効力感育成のためのICT活用など,ICTによる援助(Assistive Technology)の可能性を,整理して取り組む必要がある.