特別支援教育の中で支援を必要とする子どもたちの発達障害や情緒障害の障害研究を進めながら,ICTを活用したAssistive Technologyへの理解やそれらの技術がもつ特性は,今後,学校教育の中で,わかる授業へのアプローチとして,教員にとっての,新たな授業方略のひとつになるだろうと考えている.一方,それらは,子どもたちへの自立活動のための技術として,さらに見直されていく.
【教師の活用】
授業においては,デジタルコンテンツの表現要素であるテキスト,画像(静止画・動画),音声をどのように組み合わせることによって,授業のねらいに近づけられるか,より効果的な授業の方略となりうるか.一方,それらを混在させることで,逆効果になることを,クラス内の子どもたち一人一人がもつ認知特性,特に障害のある子どもたちにとって,それらの表現要素が,時に支障になっていることを,理解しながら,授業の中でICTを使うことの本来の意義を捉える必要がある.
今年度特別支援学校での授業観察研究から,障害のある子どもたちへのAssistive Technology(ICTを含む)を活用した授業は,そこに一人一人の障害特性の理解とニーズにあった技術支援によって,より授業のねらいに近づけさせようとする意図的な仕掛けがあった.
【児童・生徒の活用】
ICTを自立活動としての意義に捉えようとしているもう一方の技術支援では,障害のある人たちのためには,ICTの技術だけでなく,人的支援が必要になっている.このことは,総務省の調査からもわかっている.子どもたち自身の学習活動の中で,Learning Management Systemsのような自学自習を支えるために,人の介在の重要性も見えてくる.
2007年の総務省による障害者のICT利活用の調査では,ICT利活用の評価や普及のための支援活動についての実態から,以下の4つを課題に掲げている.
・障害者のICT 利活用支援に関するコーディネート人材の育成
・障害者の社会参加支援のための情報提供基盤・体制の構築
・障害者の社会参加支援のためのICT 関連研究開発の推進
・情報アクセシビリティ確保の取り組みの拡充
高齢者・障害者のICT利活用の評価および普及に関する調査研究報告書
総務省(委託三菱UFJリサーチコンサルティング株式会社) 2007
子どもたちの自立活動としてのICTを考えていくとき,そこに何が必要か.そこでは,人材,基盤整備,研究開発,情報アクセシビリティ(情報モラル・コンテンツ整備を包含する)が必要になる.
教員のICT活用指導力向上のために求められているものは,その前提条件として, 基盤整備,支援体制,研修制度がポイントになる.子どもたちの自立活動のためにも,基盤整備,支援体制に加え,研究開発の3つがポイントになる.自立活動のための研究開発では,子どもたちの自立支援は,一人一人のニーズにあった個別支援計画からはじまるLMS(学習支援システム)によって,一人一人の自立を支えていくシステムの開発が必要になると考える.