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特別支援012

リテラシーと聴覚障害
四日市彰　編著　コレール社　2009

ICTを活用したAssistive Technologyの研究を進めるにあたり，昨年付属の特別支援教育学校を訪問した際，障害種の中でも特に，聴覚障害学校でのICT活用と，生徒たちのスキルの高さに驚かされている．
本書は，聴覚障害研究から，読む，書く，話す，聞くといった，リテラシーのストラテジーが示唆されている．それらは，通常学校の子どもたちのにも通じるストラテジーであることが，何よりもすごいと感じる．

さらに，そこには，ICTを活用した研究の手法についても述べられており，ここでは，ICTが，研究の一つの手法として位置づけられ，ICTを使ったより妥当性，信頼性の高い研究にするための手法が述べられている．そこにある精緻された手続きが，どれほど厳しいかを痛感する．ただ，ICTを使えばいいというのではなく，その研究にいたる手続きこそが重要であること，そして，将来の教育の中で，ICTを使った，「評価」の位置づけが，重要であることがわかる．

例えば，課題遂行時の記録を，ICTを使って，計測し，分析することで，次のストラテジーを考えるために，課題遂行の様子をビデオで分析する．キャプチャーソフトを使って，時間，行動（課題遂行）パターンなどから，学習者の課題遂行時の傾向を分析する．そのパターンの修正から，授業方略（ストラテジー）を考えて，学習者の個別指導に当たる・・・・こうしたことは，今後の特別支援教育には，大切なことになる．

現在，取り組む新しいICTのソリューションでは，子どもたちの学習の記録を重要視して，そこから見える子どもたち，一人一人の傾向を追う．

本書第４章「聴覚障害児の読み書き研究の方法」第２節にあるオンライン的研究の手法については，以下にまとめていく．（編集中）

Assistive Technology in the Classroom

Assitive Technology in the Classroom:Enhancing the School Experiences of Students with Disabilities

Amy G.Dell  The College of New Jersey / Deborah A. Newton Southern Connecicut State University / Jerry G. Petroff The College of New Jersey (2007)  Merrill Prentice Hall, Ohio

米国でのコンピューターを活用したAssistive Technologyの実践を紹介した本書は，コンピューターを使った事例実践を画面キャプチャーを交えて，紹介している．さらにそれらのアプリケーションソフトのもつ特性や，表現要素と障害をもつ子どもたちの学習の様子が報告される．本書の翻訳から，さらに，障害種別の有用性や，アプリケーションのもつ表現要素について，まとめていく．

Amazonの内容説明引用

With an emphasis on the integration of assistive technology into the curriculum, this text focuses on how assistive technology can be used in schools to enhance the teaching and learning of students with disabilities.  This link between technology and teaching and learning drives the book’s organization as well as its content.  It is organized by school-related tasks that students must perform on a daily basis to be successful -- reading, writing, practicing academic skills, and communicating with their teachers and peers – and presents descriptions of technology-based solutions to the obstacles students with disabilities face in completing these tasks. Since being able to access computers is one major barrier, the text features a section on making computers accessible to students with a wide range of disabilities.  A companion web site offers up-to-date information on product names, vendors, web site addresses, and other time-sensitive material.

【Contents】
[Part1] Benefits of Computer use in Special Education
Chapter1 Introduction to Assistive Technology
Chapter2 Assistive Technology to Support Writing
Chapter3 Assistive Technology to Support Reading
Chapter4 Assistive Technology to Support Communication
Chapter5 Computers and the Internet for Teaching Content Areas

[Part2] Access to Computers
Chapter6 Providing Access to Computers:Using What You Have
Chapter7 Assistive Technology for Computer Access
Chapter8 Issues in Selection of Access Methods

[Part3] Augmentative Communication
Chapter9 Selecting and Desiging a Student's Augmentative Communication Systems
Chapter10 Low-Tech Approaches to Teaching Early Communication and Emergent Literacy
Chapter11 Integrating Augmentative Communication in the Classroom, Home, and Community

[Part4] Making Happen
Chapter12 Implementation of Assistive Technology in Schools
Chapter13 Implementation of Assistive Technology in Transition Planning

特別支援011

教師のためのカウンセリング実践講座
菅野純　著　金子書房　(2007)

１年前刊行された本書は，研究室のゼミ内で，書籍に菅野先生のサインをいただき，その後，現場の先生方に早速，閲覧していただくよう回した．その書籍が，１年越しで，私の手元に戻ってきた．本書から，今後取り組む特別支援教育のためのICT活用を考える．

本書のはじめにの中の，菅野先生のことば

・クラス担任の先生方に
心に愛情飢餓感やさまざまな問題を抱えた子，発達に障害のある子，不登校に陥っている子，いじめる子，いじめられる子・・・・など，いま先生方は，教科教育以前の問題に多大なエネルギーを注がなければなりません。そうした問題に取り組んでおられる先生方に，学校カウンセリングの立場から具体的な対応方法を例示しました。また自分の教師としての歩みを立ち止まり，振り返りさらに成長をとげたいと願っている先生方にも読んでいただきたいと思っています。
・管理職の先生方に
子どもの問題をクラス担任がひとりで抱え込む時代から，校内の教師たちが力を合わせて，チームを組んでかかわる時代になりました。（中略）これまで積まれた豊かな教育経験を，管理職としてどのように活かしていくかは，管理職ならではのテーマだと思います。校内の先生方を見守り，エネルギーを与えるために，校内で生じるさまざまな問題を明確化する視点や具体的な指導と支援を援助する方法等が本書には書かれています。

本書の一文一文に，菅野先生の温和な優しさが現れていて，私自身が，カウンセリングを受けているような気持ちになる．
是非，現場の多くの先生方に読んでいただきたいと思う一冊．

本書から，不登校児への課題を整理する．
不登校児の原因15のポイント

1. 「学校は理由なく休むものではない」という規範が身についているか
2. 親自身が学校生活について否定的なイメージを抱いていないか
3. 無理のない友だち関係を維持しているか
4. 学校生活に具体的な楽しみを３つ以上持っているか
5. 困った時には教師や親に救いを求めることができるか
6. これまで安定した気持ちで生活してきたか
7. 親に十分依存でき，信頼関係があったか
8. その子なりの歩みを大事にされてきたか
9. これまで神経をすり減らしてこなかったか
10. 親から心的エネルギーをたくさんもらってきたか
11. 社会の中で生きることを見据えたしつけを受けてきたか
12. 責任をもって行動することや役割達成の大切さと喜びを経験してきたか
13. 親自身が社会人として責任と義務をはたし，他者との間に豊かな人間関係を築いているか
14. 子ども本人の感受性と自我がバランスよく育っているか
15. LDやADHD，高機能自閉症，アスペルガー症候群といった発達上の問題を有していないか

不登校へのはたらきかけのエッセンスとして，不登校指導は，予防的指導，援助的指導，予後的指導の３つに分類される．

今後取り組む不登校児・生徒のためのICT活用は，援助的指導の中で，子どもたちが抱える一人一人の課題に対応できるものでなければならない．そこでは，学習支援のためのICT活用，コミュニケーション能力育成のためのICT活用，自己効力感育成のためのICT活用など，ICTによる援助(Assistive Technology)の可能性を，整理して取り組む必要がある．