「拡張による学習」でエンゲストロームが論じるところの人間の学習活動は、
人間の内的矛盾との葛藤から生まれ、更なる未知なるモノへの探求心の拡張である。内的矛盾とは、ソクラテスの無知の知を意味する。自分自身の無知を知り、そこから未知なるモノに探求していく能動的活動が学習である。その探求心こそが、学習のための活動と変化にとっての源泉になる。
原著「第2章~人間の学習の歴史的形式としての学習活動の出現」では、
・ここで言う「歴史的形式」は実際少しわかりにくい訳語である。原語は、historical formから訳されている。historical materialism(史的唯物論)のhistoricalと同義であると考えると、わかると思う。人間の学習における発展や変化を史的過程において、説明している。
来日講演の中でも、新しい歴史的形式での学習理論を紹介している。
Bart Victor and Andrew Boynton (1998) provide a useful historical framework for such a reintegration of organization, work and learning. They identity five type ofwork in the history of industrial production:craft, mass production, process enhancement, mass customization, and co-configuration(Figure1).
エンゲストロームは、学習活動を、
1.学校教育での学習活動
2.労働での学習活動
3.科学と芸術での学習活動
の3つの側面から、検証している。
学校教育での学習活動は、学校における問題解決に必要なレディネスを要求されるような課題であり、学校以外の問題解決に無関係、非連続性であることを指摘している。
講演の中では、企業における学習活動に関して、
In other words, co-configuration is more than just smart, adaptive products, "With the organization of work under co-configuration, the customer becomes, in a sense, a real partner with the producer."(Victor & Boynton, 1998,p.199)
企業が、顧客とのパートナーシップの中で、より拡張性のある学びの追求が必要であることを言及している。
このことは、学校教育においては、教師と児童・生徒という関係で同様に考えることができる。