インクルージョン時代の障害理解と生涯発達支援
東京学芸大学特別支援科学講座 編 編集代表 高橋智 日本文化科学社(2007)
「インクルージョン?新語ばかり使うけど、本当にそれでいいのかな。人が同じであることなんてないよね。人は違っていいんじゃないの。」
「明らかに弱者に対して、彼らと一緒にいることで、一緒に成長させてもらっているんです…なんて、絶対禁句ですからね。」
「障害児がサンプルになっていないかな、その研究?そんな研究に向かっては、いけないよ。」
ICTの活用と障害をもった子どもたちを見つめながら、リスペクトする教育者たちから、障害児教育に関して、たくさんの指導を頂いてきた。
本書は、特別支援教育の入門書として、刊行され、近年のユニバーサルな方向に向かっている特別支援教育に関して、詳細解説している。
- 国内では特殊教育から特別支援教育へのシステムが変更
- 国際的には特別ニーズ教育や障害者権利条約に示されるインクルージョンの方向に展開
- 多様な特別なニーズを有する子ども、青年、成人の生涯発達支援と枠組みの拡充
- 教育・福祉・医療・就労等の関係機関との連携・協働によるライフステージに応じた支援ネットワークの構築
- IT・脳科学・認知神経科学・障害科学・ユニバーサルデザインなどの新科学技術の発展
本書の中で、私は、特に「中学校特別支援学級と思春期障害児の発達支援」に関心がある。
ここでうたわれる従来の特別支援学級の課題から、解決策を探りながら、3つの援助と役割について取り上げている項目。
- 固定式特別支援学級のニーズと役割
- 特別支援学級としての教育を基本としつつ、部分的な通常学級への援助としての入り込む援助と役割
- 学校生活の基本を通常学級に置き、国語、数学など一部の時間を特別支援学級に抽出して指導する役割
こうした支援の方法と役割を考えながら、そこに通う生徒たちの心のありように注目することが重要と本書は、説く。
小学校では、通常学級に通い、中学校で入級してきた障害の比較的軽い生徒の発達の遅れと様々な歪みをもっている場合がある。また、通常学級で体験した「できない自分」に直面し、学習意欲や生活意欲を失ったり、いじめの対象にされたり、自分より弱いものに対して攻撃的になったり、逃避的行動として不登校になるなど、多くの課題を抱えていること。
中学校では、より一層、「学習の楽しさ」「わかるという実感」「やりきった時の自信や充実感」などを保障学習活動を通して、本人の意欲や自信を取り戻すための特別な働きかけが必要となり、周囲の理解や配慮が求められている。
私が本来、学校教育の中で、ICTの活用が取りいれられるのは、子どもたちのセルフエフィカシーや学習の楽しさに、つながるツールとしての活用であると感じている。そして、このICTが投下されていかなければいけないのは、こうした障害をもつ子どもたちなんだろうと感じている。