ことばの発達と障害1 ことばの発達入門
秦野悦子 編 大修館書店 (2001)
子どもたちのコミュニケーションを見つめていると,そこには,「ことば」を考えずにはいられない.言語発達から,障害に至るまで,人にとって,コミュニケーションとは,なんだろうか.
本書,第6章,「心の理解」とコミュニケーションの発達ー「信ずること,欲すること」の発達と援助ーにあるひとの相互伝達行為,要求伝達行為がすでに,0歳児に始まり,自己・他者思考や,自己・他者欲求という相互理解の発達は,乳幼児期に始まっていることがわかる.
学校教育の中での,子どもたちの心の理解,心の課題から,心の教育を,ひとの発達プロセスの中で,捉えていくと,学校教育現場で,できること,できないことが見えてくるのだろう.
ことばの発達と障害2 ことばの障害入門
西村辨作 編 大修館書店 (2001)
言語発達障害の概要を,総論として捉える.
その中で,特に学習障害について,まとめる.学習障害(LD)は,医学的概念,教育・療育的概念から,整理する.学習障害は,医学関係者と,教育関係者でその概念が一致しない,欧米と日本で対象となる子どもにも違いがある等,今後,日本の土壌にあった障害概念の確立が課題である.
英語圏では,知的な発達に比べて,読み書き障害が,LDの中核である.それは,アルファベットにある文字・音の複雑さにある.一方,日本の子どもたちの場合,読み書き障害は,漢字の学習に大きな問題を持つ.日本語の場合,1つの漢字のもつ複数の読みを覚えられない,送り仮名を学べないこと(大石1997)は,漢字のもつ2つの表音特性に関係する.
そして,最も注目することは,音韻領域でのワーキングメモリーへの課題である.
読み障害の子どもたちの多くが,意味情報を含まない音韻記号の操作に問題を持つ.つまり,読み障害の子どもたちには,音韻と意味情報を組み合わせた指導法が有効であることを示唆する.
これらから,例えば,コンピュータを活用したフラッシュカードでの学習が,有効になる.
ことばの発達と障害3 ことばの障害の評価と指導
大石敬子 編 大修館書店 (2001)
本書,第6章補助代替コミュニケーションで,紹介される情報機器による学習に注目する.この領域研究は,何らかの障害によって,通常の手段では周囲の環境と安定した関わりを実現できない人のために,人の社会的行動としてのコミュニケーションを確立することを目的とする.障害を持つ人たちの潜在的なメッセージをどう引き出すかが課題になる.