コミュニケーションに障害をもつ子どもたちへの指導法の開発は、新しい教育ツールとして,iPod,DSなどのモバイル端末を使って,研究が進んでいく.モバイル端末を利用した教授法は、障害(対象)にあったアプリケーションの選択(開発)も重要であるが,それらは,コミュニケーションプログラムによる指導法の研究開発を進める中で,同時に進行していくことが必要になる.
Van DijkのCommunication Methodsは, コミュニケーション発達の段階にあった指導手続きの7段階の中で,5段階めにあたる共同活動後期に,絵カードなどのシグナルを活用した指導法が明示されている.この指導段階では,今後,モバイル端末をうまく利用して,モバイルアプリの開発とともに,新しいコミュニケーション能力の指導法開発がされていくことに,注目されていくだろう.
参考:Van Dijk Communication Methods
http://aac.unl.edu/yaack/
http://aac.unl.edu/yaack/d2a.html
http://www.tsbvi.edu/Outreach/seehear/archive/conversation.html
重度・重複障害児のコミュニケーション能力の評価ーバンデュークプログラムの適用ー
中山健ほか 筑波大学 1997
米国ミネソタ州ミネアポリスで,13日より開催される先進のAssistive Technologyを紹介するカンファレンスでは,iPodなどのモバイル端末を使い,開発アプリを使った自閉症児,脳性麻痺児へのコミュニケーション指導法の研究などが紹介される.
Closing the Gap 27th Annual Conference
http://www.closingthegap.com/media/pdfs/conference_brochure.pdf
コミュニケーション能力の育成は,障害児だけでなく,健常の子どもたちにとっても,大切な能力の育成である.Van DijkのCommunication Methodsの特徴は,子どもが示す動作やシグナル,身振りなどどのような行動でも,コミュニケーション手段として利用していくことから,まず,子どもの実態の中で,コミュニケーション能力を評価し,評価結果に基づいた適切な指導手続きから,ひとりひとりに合った指導計画がされる.
コミュニケーション能力を,認知,受容コミュニケーション,表出コミュニケーションの3領域から評価し,これら各領域における機能水準から,指導法の7つの手続き段階(前共鳴期,共鳴前期,共鳴後期,共同活動前期,共同活動後期,遅延模倣前期,遅延模倣後期)に査定し,子どものコミュニケーション発達段階にあった指導がされる.
こうした障害のあるなしに関わらず,子どもたちへの指導のアプローチは,ひとりひとりの子どもの実態にあった指導法が必要になる.そこでは,アセスメントとその結果からの指導法の開発が重要である.
その指導法のひとつ,具体的にどのような教具や教材を使っていくかの中で,発達の段階にあったツール選択をすることが重要になる.今回モバイル端末を利用した指導法開発は,まだ,新しい分野で,今後,実践事例から,検証していくことになる.すでに,米国をはじめとした先行事例など,指導法の研究が進んでいく中で,日本においては,アプリの未開発をはじめ,いくつかの課題がある.
コミュニケーション障害をもつ子どもたちに向けた新しいモバイル研究は,発達段階にあった「もの・媒体」との関わりがあることがわかってきた.それらは,近年学校教育で課題になっている子どもたちと携帯電話など,コミュニケーション能力の発達と,ツールの扱いへの新しい知見にもなるだろう.コミュニケーション能力の発達段階には,コミュニケーションツールを利用する段階があることがわかったとき,今後のコミュニケーションプログラムの研究は,さらに,そのツール開発が加速して発展できるものと考える.
人間のコミュニケーション能力の発達は,もの(モバイル)ありきではなく,人と人との関わりに,ものがどう関わるかが,今,問われていく.