コネクショニズム
都筑誉史(Takashi Tsuzuki)立教大学
Cognitive Studies, 8(3), 225-237 (2001)
招待論文「20世紀の認知科学を振り返るー新世紀の発展に向けて」から
Abstract(English)
Connectionism is an approach to understanding the mechanisms of human cognition using simulated networks of neuron-like processing units. In this article, I attempt to report on recent progress in connectionist models that simulate empirical data of natural cognitive tasks, these being visual word perception, memory, word naming, understanding word meanings, speech perception and production, sentence understanding, and reasoning. I also summarize the advantages and disadvantages of these connectionist models. In particular, the problems of dealing with structured information in distributed form, and doing tasks tat require variable binding in connectionist networks are discussed from several different perspectives. I argue that connectionist computer simulation offers significant benefits for today's researches of cognitive science, and that connectionist modeling is likely to have an important influence on future studies. The question of how the human brain efficiently realizes and learns symbols and rules by the parallel distributed processing is still one of the great intellectual problems of our time.
Keywords:
connectionist models, parallel distributed processing, neural networks models, symbol processing, computational theories
要約(日本語訳)
コネクショニズムはニューロンのような処理装置のシミュレートされたネットワークを使用することで人間の認知的メカニズムを理解することへのアプローチである.本論文は,認知心理学的観点から,得られたデータをシミュレートするコネクショニストモデルを,単語認知,記憶,単語音読,語義の理解,音声認知・音声産出,文理解・統語処理,推論・類推について,展望する.また,コネクショニストモデルの利点,難点をまとめ, 特に,構造化された表現とルールの問題に対し,柔軟な変数束縛と,構造化された表現をコネクショニストモデルでどう扱うかを議論する.コネクショニストのコンピュータ・シミュレーションは今日の認知科学研究に大きく貢献してきたし,また将来の学習に重要な影響力を与えるだろう.それでも,人間の脳が並列分散処理モデルによってシンボルとルールを理解して,どのように効率よく理解され,学習されているかに関する課題は,認知科学研究の大きな課題のひとつになる.
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○論文抄読について
(課題:レジュメを作成して研究の概要,論文にあるセオリーの説明,論文批評をする)
【レジュメ】(掲載省略)
コネクショニストモデルは,1980年代後半以降,認知科学研究における大きな潮流を構成してきた.障害科学の領域でも,脳の障害を捉えた研究が進んでいる.
言語障害に取り組む研究では,
言語情報科学特論での自己組織化マップの研究に続く研究を考えていく.
【論文にある研究背景,理論の説明】
まず,本論文から,コネクショニストモデルの概要を押さえる.
1.1.基本的な特徴
コネクショニズムは,脳の神経細胞から抽象化された処理ユニットのネットワークを用いて,人間のメカニズムを理解しようとする計算論的アプローチである(Mc-Clelland,1999)並列分散処理モデル,ニューラルネットワークモデルとは,同義である.
しかしながら,コネクショニストモデルは,シミュレーションの際には,様々な抽象化がされていることに留意しなければならない.つまり,実際の神経細胞の活動においては大まかな近似であり,モデルのユニットはここの神経細胞というよりも,神経細胞グループとしての表現である(Thagard,1996).
モデルを構成するネットワークの各ユニットは,活性値(activation value)をもち,シナプス結合に相当するユニット間の結合(connection)を通じて,活性化を伝播し,並列的に相互作用する.分散表現を用いたコネクショニストモデルにおいて,知識は結合強度(connection weight)の結合として表現され,新たな知識の獲得は,学習規則に基づいたここの結合強度の調整によって,実現される.
以下論文の構成に従い,説明をする.(レジュメ参照)
1.2.研究の略史
1.3.物理記号系仮説とコネクショニズム
2.単語認知
3.記憶
4.単語音読
5.語義の理解
6.音声認知・音声産出
7.文理解・統語処理
8.推論・類推
【対極論の説明】
次に,本論文から,言語障害におけるコネクショニストモデルによる学習支援について,考察するために,論文だけではわかりにくい先行研究からの理論を説明する.
コネクショニストモデルを理解する上では,その対極にある二重ルートモデルを理解する必要がある.二重ルートモデルは,いわゆるボックスアンドアローモデルの一種であり,読み障害を理解する上では,トライアングルモデルと合わせて重要なモデルになる.Dyslexiaは,これらのモデルからの研究が多く,読み障害の解明もされている.
【新しい研究の動向】
論文は,2001年のものであるため,近年の研究論文など,コネクショニズムの新しい動向などを資料として添える.(参考資料省略)